STORYSHO Kizaki
#002-2 野球酷い時にはセンターからライトまで
2021.06.15
#002-2 野球酷い時にはセンターからライトまでの数十メートルの間、ビンタを受け続けたこともあった。そうして耐えて努力し続けたが、レギュラーにはなれなかった。人生最初の挫折といっていい。 ほとんどの人間が経験する最初の現実― ヒーローになれると思っていたのになれない自分がいる。その現実を受け入れ、一歩、大人に近づかなければならない悲しい瞬間。 しかし、翔はその現実を素直に認め、受け止めた。だが、この少年が少し違っていたのは、そこで終らなかったことだ。野球ではヒーローになれなくても、自分には違う可能性があると信じた。 とはいえ、この時点では何も見えていなかった。野球という人生の目標が消えた今、これから自分が何を目指したらいいのか分からない。具体的な道は見えていなかった。