STORYSHO Kizaki

#007-5 確執アパートに戻った翔は

2021.09.26

#007-5 確執アパートに戻った翔は布団の上に寝転んだまま考えた。 ―片手間にホストをやっているヤツに… 自分にできる事は何でもしてみたい。でもそれが周囲には片手間にやっているように見えていた。だからホストを一生懸命やっている蓮の怒りを買ってしまった。美香もきっと自分がギャルソンズでバイトしている事を不満に思っていたのだろう。だから蓮に指名替えしたんだ。そう思う事にした。いや、そう思って諦めるしかなかった。 だが、この事件はそんな浅いものではなかった。 その日、翔はいつもより早く草加のアパートを出て店に向かった。理由は別にない。早く目が覚めたから。 草加の駅に向かって歩いていると「翔!」と呼び止められた。振り向くとブルーナイトの先輩で同じ草加に住んでいる達也の姿があった。 「早いな。もう出勤か」 「なんだか眠れなくて…早く起きちゃったから店に行こうかと思って」 「そうか…じゃ、ちょっと茶でも飲まねぇか。話してぇ事あっからさ」 達也は先輩といっても20代前半で翔と歳は変わらなかった。30歳前後が多いブルーナイトの中では若手という事で仲が良かった