STORYSHO Kizaki

#001-3 総帥2003年11月、中国遼寧省大連市

2021.05.23

#001-3 総帥広さ20坪程の部屋では会議が行われ、青年はその上座にいた。 日焼けした褐色の肌に耳まで隠れる茶髪。11月には30歳を迎えるという年齢の割には童顔に見える純朴そうな顔。一見すると、どこにでもいる“イマドキの兄ちゃん”風で、無邪気さを秘めた子供の様な瞳が印象的だ。 会議は青年がオーナーを務めるキャバクラグループの月例会議だった。幹部たちは、売り上げやキャストたちの管理などについて、現在グループが抱えている課題とその対策案を報告していた。 このキャバクラグループは、都内には一店舗も店を持たず、千葉や埼玉などの首都圏で十数店舗を展開するという大成功を納めている異色の企業だった。 十数店舗を抱えるグループの幹部会なのだから、そこに抱える問題・課題は少なくはない。幹部たちはグループを維持していくための対策を必死で考え、会議に臨んでいた。 幹部たちが次々と発言する様を青年は無言のまま眺めていた。その子供の様な好奇心に富んだ瞳で。 報告が一通り終え、会議が途切れた時、青年は何の前触れもなく突如立ち上がった。 「僕から一つ提案があるんだけど」 一同は「何事だ」と言わんばかりに青年を見た。青年はその視線に臆することもなく淡々と言った。 「大連に店を出す」 「はっ!?」 突如、放たれたそのひと言に幹部たちは驚いた。