STORYSHO Kizaki

#204-2 理由ビシャ…〟そんな一同の前に

2022.1.05

#204-2 理由ビシャ…〟そんな一同の前に飛び出し、炭と煤の混ざった水に浸された床に土下座する男がいた。火事を起こした張本人であるキッチン担当のスタッフだった。 「すいませんでした!すいませんでした!すいませんでしたぁ!」 額を床に擦りつけ、叫ぶように何度も何度も叫んだ。 「そんなこと今さら、言わないでよ!」 「テメェ…どうするつもりだ」 「すいません!すいません!」 男は他にできることもなく必死に謝り続けた。 そんな「怒」と「哀」で満たされた店内で、ポツリと呟かれた消え入りそうなほどの小さな声が一同の耳に届いた。 「もう、いいよ…」 翔だった。そして、翔はそのまま何も言わずに店を出て行った。 「オーナー…」 「翔さん…」 怒鳴る事もなく、泣く事も、誰かを責める事もせず、静かに去って行く翔の後ろ姿を一同はただ見送るしかなかった―。