STORYSHO Kizaki

#301-3 紹介話を聞きながら

2022.2.8

#301-3 紹介話を聞きながら翔はそう思った。 それから一時間くらいが経過しただろうか、自己紹介代わりと言わんばかりに仕事の説明をひとしきり終えた田中は声のトーンを落として呟いた。 「さて…」 テーブルに両肘を乗せて、顎の前で両手の指を組み合わせ、少し顎を引くと、上目遣い気味に翔を見ながら言葉を続けた。 「実は今日、輝咲さんとお会いするにあたって、手みやげ代わりに儲け話を持って来たんです」 「儲け話?」 「ええ。今、懇意にしてもらっているクライアントの社長が車の購入を検討しているんだけど、予算と希望に合う車がなかなか見つからないらしいんだ。それで、僕の所にその社長から予算と希望に合う車を見つけられないかって相談があってね」 「はぁ…。でも、僕、車には強くないですよ」