STORYSHO Kizaki
#002-4 野球卒業を控え、自分の行く先が見つからなかった翔
2021.06.15
#002-4 野球卒業を控え、自分の行く先が見つからなかった翔は、高校の就職課の勧めに従い、流されるままに電子部品メーカー「富士井電機」の日野工場に就職することにした。選んだ理由はただ1つ、実業団野球があったから。先は見えずとも、野球が好きだという気持ちだけは萎(な)えなかったのだ。 こうして翔の社会人生活は週2回、午後6時から8時までの野球を中心に始まった。実業団野球の大会では、東京ドームのピッチャーマウンドを踏んで感激した。自分が憧れた幾多の名選手たちが立った場所に自分も立っている、と。 しかし、充実する野球生活とは裏腹に、工場での仕事は変化のない単調なものだった。朝9時から夕方5時までベルトコンベアーに乗って流れてくる部品を、ただ黙々と組み立てるだけ。それに加えての薄給。