STORYSHO Kizaki

#005-2 哲学ホストは売り上げのために酒を

2021.08.22

#005-2 哲学ホストは売り上げのために酒を飲ませるのが基本だが、中には自分と同じく酒が弱い客がいる。そんな客にウケるホストになろうと考えた。酒でなくとも、その分、ソフトドリンクを飲めば一緒だ。酒が飲めない自分を逆手に取った発想だった。 そう考えたのには自分が酒を飲めないからというのとは別の理由もあった。 ホストの中には売り上げのために、半ば無理やり酒を飲ませ、記憶が曖昧になっている間に高価な酒を入れさせるという悪質な者もいた。一時的には売り上げは立つかもしれないが、長続きはしない。あくまでも楽しく飲んでもらい、遊んでもらい、それに見合った対価・お金をいただく。それが正しい接客業のあり方だと思った。 自分のした仕事に見合った額。自分の身の丈に合う額でなければ、金に翻弄されてしまう。そう考えたからこそ、酒の飲めない客の気持ちを誰よりも理解できるホストになろうと思った。 しかし、いくら相手の気持ちに立つ事ができても、一緒にいたいと思わせなければ仕事にならない。翔は口下手だ。会話で客を盛り上げる事はヘタだったし苦手だった。