STORYSHO Kizaki

#010-2 飛躍翔とは対照的に、スタッフたちは

2021.10.24

#010-2 飛躍翔とは対照的に、スタッフたちは漲る気合いを返した。 「よろしくお願いします!」 翔の気負った様子が微塵も感じられない様は、大物だからか鈍感だからか。どちらにせよ、この2週間前に23歳の誕生日を迎えたばかりとは思えない、その落ち着きぶりに、スタッフたちも緊張せずに開店を迎える事ができた。 8時の開店と同時に、隣のギャルソンズで待っていた常連客たちがなだれ込み、7席あるボックス席は一瞬で満席となった。それでも、まだ入りきれない客でギャルソンズは満席だった。 翔はホストとして客席に着くこともあったが、基本的には店長兼ホール係として、ドリンクなどをテーブルに運ぶ役と、どの席にどのホストを付け、どのタイミングで交代させるかなどを判断し指示する“付け回し”に専念した。 客がつまらなそうにしていないか。会話が盛り上がっているか。もう少し席に付けてれば指名がもらえそうか。ホストに限らず水商売では、店が繁盛するためには、良いホスト・キャストが揃っているのと同じくらい付け回しは重要だった。 「修さん、3番テーブル・恭子さんの席、お願いします」 「達也さん、1番テーブルにヘルプお願いします」