STORYSHO Kizaki

#010-1 飛躍―1996年11月29日

2021.10.24

#010-1 飛躍―1996年11月29日 ビルの入り口からシャルマンへと通じる階段・通路には、出入りの業者やギャルソンズの常連客、古巣のブルーナイトなどから出された開店祝いの花がズラリと並んでいた。そして、客たちは6時を過ぎた頃から姉妹店のギャルソンズに集まり、夜8時の開店を待っていた。 カウンター席やテーブル席で開店はまだかと待つ客たちは、楽しみを抑えきれない様子で、カウンターの中の悟志や恵と話をしていた。 「いよいよ今日かぁ…翔ちゃんの店長デビュー」 「翔君もだけど、悟志さんも恵ちゃんも、今日に向けて大変だったのを見てきたから、なんか俺たちまで緊張しちまってるよ」 「ここの常連だった修のヤツもホストやるってんだろ。アイツに務まるのかよ」 一方、開店を30分前に控えたシャルマンの店内では、久しぶりにホストの仕事用のスーツに身を包んだ翔の姿があった。 翔は太田や修、達也たちの前に立つと緊張した様子もなく、いつも通りの淡々とした調子で挨拶した。 「みんなのおかげでシャルマンも何とかオープンに漕ぎつける事ができました。でも、今日からが本番です。よろしくお願いします」