STORYSHO Kizaki

#011-2 失意―1997年5月31日

2021.10.31

#011-2 失意―1997年5月31日 5月最後の営業日。締め日であるこの日は、週末の土曜という事もあって、いつも以上に賑わっていた。 客席が少ないとはいえ、満席となった店内を見渡し、翔は思った。開店から半年が過ぎ、店の基盤も固まり安定してきたから、スタッフの給料を上げてもらえるように悟志に頼もうと。売り上げについては悟志が回収・管理しているので具体的には分からなかったが、客入りも良いし、ホストに“ツケ”などの売り掛けもさせていないので、認めてもらえるだろうと考えていた。 そんな事を考えている時、客席の達也から声がかかった。 「店長、ドンペリ頂きました」 いったん翔は奥に戻ると、高級シャンパンのドン・ペリニョンと、シャンパン特有の細かい泡を楽しむための細長いフルートタイプのシャンパングラスを2つ用意し、達也の席へと運んだ。 最近では1本3万円もするドンペリもオーダーがコンスタントに入るようになっていた。それは単に、スタッフたちの努力によるものだった。