STORYSHO Kizaki
#011-8 失意「…」翔たちは何も言い返
2021.11.14
#011-8 失意「…」 翔たちは何も言い返せなかった。そして悟った―店が終わることは、もう避けられない事なんだと。頭を下げ続ける悟志を見て、悟志が今日まで1人で苦しんできた事を理解した。すると、翔の中でさっきまで渦巻いていた悟志を責め立てるような感情は消え失せていた。代わりに、どうする事もできない現実に打ちのめされ、力なくうつむいた。仲間たちも同じ気持ちでうつむいた。 悟志は、そんな翔の姿をそれまでの悲しそうな瞳ではなく、なぜか優しげな瞳で見つめた。そして穏やかな口調で話し始めた。 「キミが娘に連れて来られてギャルソンズで働きたいと言った時のこと、今でも憶えているよ。あの時、キミは『この店の魅力をみんなに知ってもらいたい。そのために自分にも何かできる事があるかもしれない。それを見つけるために、ここで働かせて欲しい』そう言ってくれたよな」 翔は静かに頭を上げた。他の仲間たちも同じように顔を上げ、悟志を見た。