STORYSHO Kizaki

#011-7 失意言っている意味が理解で

2021.11.14

#011-7 失意言っている意味が理解できないといった感じで、悟志の言葉を繰り返した。 「ああ…実は、この1年間、ここの家賃はほとんど払えてないんだ。だから、大家の方から今月いっぱいで解約にすると言われて」 「そんな…だって、ちゃんと稼いでいたはずですよ。ギャルソンズだって。シャルマンができてからは、以前よりお客さんも増えたじゃないですか。それなのになんで」 納得できない翔は悟志の両肩をつかんで揺すりながら答えを求めた。そんな翔に悟志はか細い声で言った。 「そのおかげでここまでやれたんだ」 「え!?」 悟志の言葉に翔はそれまでの熱が冷めたかのように固まった。悟志は哀しそうな表情で言葉を続けた。 「本当は6ヶ月前、翔君がウチの店に来たいと言った時には、既に借金がどうしようもない額にまで膨れ上がっていたんだ。輝咲君が来てくれて、シャルマンができてからは売り上げも伸びはしたが、それでも借金の額からしたら焼け石に水だった。半年前までは利子すら返せていなかったのが、最近は何とか利子だけは払えるようになった。でも、そこまでだ。元金と滞納した家賃を支払うまでには到底、至らなかったんだ。俺にはもう自己破産するしか他に道がなくて」 「でも、恵さんはそんな話、ひと言も…それに、どうして俺に何も話してくれなかったんですか?」 「すまない…どれだけ売り上げを伸ばせたとしても、こんな小さな店だ。借金を返していく事は到底、不可能なこと。いつかは必ず終わりが来る。そんな事を考えながら、若いキミたちに仕事をさせたくなかったんだ。娘にも今日まで借金の事は話していなかった。本当に申し訳ない」 「…」