STORYSHO Kizaki

#203-4 炎上細い路地から店のある通りに

2021.12.26

#203-4 炎上細い路地から店のある通りに出た時、その光景は翔の目に飛び込んで来た。 建物の前には消防車が数台止まり、放水して消火作業にあたっている真っ只中だった。消防服姿の消防隊員たちが忙しなく動いていた。そして周りには数十人の野次馬たちで人集りができていた。 店のある2階に視線を向けると、窓からは火の手が見えない代わりに、灰色よりも煤けた色をした鼠色の煙が茜色に染まった空に向かって伸びていた。 「なん…だ…これ…」 テレビのニュース番組の中で見たことがあるような光景だった。 (ああ、燃えたんだ…) 人集りの外で翔はテレビでも見ているかのように、呆然とその光景を見ていた。 その人集りの中心で消防隊員から質問を受けていた太田は翔に気付くと駆け寄って来た。太田は翔が車の中で想像していた神妙な面持ちよりもずっと深刻な、泣きそうな、悔しそうな、悲しそうな…その全てが入り混ざった表情で言った。 「すいません」 しかし、まだ夢の中にいて意識のハッキリしない感覚の中にいた翔は 「うん…」 そう答えるしかなかった―。