STORYSHO Kizaki

#310-2 人選これらの条件の背景には、

2022.5.27

#310-2 人選これらの条件の背景には、26歳ながら夜の世界で必死に生きてきた経験に基づく根拠があった。見た目は化粧でカバーできるし、心の持ちようが容姿に反映されて全体を引き立たせる場合もある。だが、心が乱れを直すのは容易ではない。 翔は〝商品〟であるキャストを誰よりも 〝個人〟として扱った。例えば、関西弁の女の子を面接したことがあった。彼女は他店の面接で、「関西弁はお客さんを不快にさせる場合もあるから、直せないなら雇うことはできない」と言われた。しかし、翔は彼女との会話の中から、そんな表面上の響きには左右されない、その底にある彼女の性格の良さを感じた。 「その関西弁はアナタらしさなんだから、むしろそのままでいて下さい」 彼女に採用決定を告げる時、翔はそう言った。あれから数年が経つが、彼女は今でもKIZAKIグループでキャストとして働いている。彼女は自分らしさを認めてくれた翔に、そして店に恩返しをしたいと言った。今日も頑張って働いている…関西弁のままで。 キャストの個性が結集したのが店。その店側が接客マニュアルで一方的にキャストを統制してしまったら、量産したような画一的なキャストしかいなくなってしまう。そうなると客は誰を指名しても同じになってしまい、店の幅がなくなってしまう。店をつくりあげてくれるキャストの個性を大切にするのが、翔なりの考え方だった。 店の質を高めるには、自分の価値観を押しつけず、スタッフ達の個性を尊重する。その人の個性を引き出すためにルールや環境を作るのが上に立つ自分の仕事。同じ人はその店に2人といらない。他の人と違うからこそ、その人がいる意味がある。 翔のこの考えは、キャバクラに限らず企業でも同じことが言えるだろう。