STORYSHO Kizaki

#003-5 ホスト翔は突然、降って湧いた状況に

2021.08.16

#003-5 ホスト"翔は突然、降って湧いた状況に戸惑い、呆然と言葉を失(な)くしていた。殴られた顔面には青アザができていた。高校時代、野球部で殴られた記憶が蘇った。そして、このことによって分かった。ホストの世界というのは、表面的には茶髪の兄ちゃんたちがチャラチャラしているようだが、実態は体育会系の縦割り社会なのだということが。店内には煙草の紫煙(しえん)の香りと酒の匂いが充満している。それが翔にとっては耐え難く辛かった。なぜなら、翔は生まれて此(こ)の方、酒も煙草もやったことがなかったからだ。やらなかった理由はこれといってない。煙草は匂いが好きになれず、酒は体質的に合わないから。高校の時に1度、友達と酒を飲んだが、激しい目眩と吐き気がした。酒は自分に合わないと分かり、以後、一滴も口にすることはなかった。嫌いなモノ、自分に合わないモノ、興味が無いモノには一切手を出さない。翔はそういう人間だった。しかし、ここは酒と紫煙が蔓延する世界。翔のそのスタイルが通用するはずもない。戸惑う翔に更に追い討ちをかける難題が課せられる。"