STORYSHO Kizaki
#011-5 失意店内にいる誰もが言葉
2021.11.07
#011-5 失意店内にいる誰もが言葉を失った。いや、悟志の言葉の意味が理解できなかったと言った方が正確だった。 (シャルマンが閉店。何で店を閉じなくちゃならないんだ) 翔の頭の中では、そんな疑問がグルグルと渦巻いていた。それは恐らく1分にも満たない時間だったのだろうが、何十分、何時間にも思える程の時間だった。それは他のスタッフたちも同じだった。ようやく少しの冷静さを取り戻すと翔は口を開いた。 「何で閉店しなくちゃならないんですか。売り上げは悪くなかったはずです。閉めなきゃならないなんて事はないはずです」 静まり返った店内に響いたその言葉は、その場にいた誰もが思っていた事だった。 「みんなは本当によくやってくれた。でも、どうしようもないんだ。この店の不動産契約が今日で解約される。これ以上、続ける事はできないんだ」 「だからどうしてですか?」 翔は声を荒げていた。普段、感情の起伏を見せない翔の怒気を含んだ声にスタッフたちは驚き、翔を見た。