STORYSHO Kizaki

#012-3 蘇生こうして閉店を告知された

2021.11.21

#012-3 蘇生こうして閉店を告知された翌日には、開店に向けて動き始めていた。 酒や食べ物の仕入れ先は既に確保されている。客へのリニューアルオープンの連絡は各々ですればいい。店内の準備は昨日まで使っていたもので充分。今まで悟志がやっていた金の管理方法は、やりながら憶えるしかない。すべき事はただ1つ、不動産の契約だ。翔はそう結論した。 酒も煙草もやらず浪費癖もない翔には、トラックの運転手時代、ホスト時代、そして店長の仕事を経て、不動産の契約料を払える程度の貯金はあった。 早速、翔はシャルマンの入っているビルの隣に在る大家の元を訪ねた。居間に通された翔は畳の上で正座し、大家と対峙した。大家は竹ノ塚にいくつもの土地や建物を持つ資産家で、地元の名士だった。還暦を迎え、白い髭をたくわえ、和服に身を包んだその姿は、頑固で厳格さに満ち溢れていた。だが、翔は物怖じする事なく会話を切り出した。