STORYSHO Kizaki

#012-5 蘇生そう言うと額を畳みにつけた。

2021.11.28

#012-5 蘇生そう言うと額を畳みにつけた。普段はオットリしている翔だが、本気になった時は凄かった。何が何でもやってやる、押し通すんだという気迫が漲っていた。 駆け引きのない、真っ直ぐな言葉と熱意。ついさっきまで皮肉を浴びせていた大家だが、翔の気迫に圧倒された。 「お前が本気なのは分かった。だが、ワシもボランティアでやっているわけではない。その歳でちゃんと契約するだけの金はあるのか。家賃が月20万に、保証金が1年分、それに礼金が2か月分。合計で300万以上かかるぞ」 「大丈夫です。それくらいなら、これまでの仕事で貯めてあります」 (ほうコイツ、水商売のくせに金をちゃんと扱えるのか。思ったより、しっかりしてそうだな。チャラチャラしたブランド物も身に付けておらんし) 翔に対する大家の見方が少し変わった。この大家の金に対する考え方と、翔の考え方は通じる所があった。翔は酒、煙草は一切しなかったし、当時、ブランド物も全く持ってなかった。郊外という立地上、車は乗っていたが、それも国産の軽自動車だった。当時、翔の年収は700万を超えていたが、贅沢品には全く見向きもしなかった。