STORYSHO Kizaki
#013-2 保証人ここまで来て、
2021.12.05
#013-2 保証人ここまで来て、自分の非力さに腹が立った。悔しさから、横にあった電柱を渾身の力を込めて殴った。 「痛っ!」 右手の拳に激痛が走った。拳の皮が剥け、血が滲んでいた。その痛みは紛れもなく現実だった。そんな途方に暮れている翔に背後から声がかかった。 「よぉ、翔ちゃん」 「大将」 振り向いたそこにいたのは、近所の『鶴寿司』の主人だった。年の頃、40代半ば、翔たちはこの主人を“大将”と呼んでいた。 「いやぁ…電柱なんか殴ってるから、一瞬、違う人かと思ったが、やっぱり翔ちゃんだよな。普段は大人しいのに、そんな事するなんて珍しいな。どうした、悩みでもあるんなら聞いてやるぞ」 大将はいつも近所のキャバクラで飲み、そこの女の子を連れてシャルマンに来てくれていた。また、地元の少年野球チームの監督もしていたため、野球好きの翔とは気が合い、たまに2人でキャッチボールをしたりする仲だった。