STORYSHO Kizaki

#202-1 洗礼開店から2時間が経過し

2021.12.20

#202-1 洗礼開店から2時間が経過し時計は午後10時をまわった。開店時の来店客の多くは既に帰っていたが、新しく来店した客と入れ替わっただけで、相変わらずの盛況ぶりだった。 しかし、建物の前では並ぶ祝い花を見てニヤリと口の端をつり上げ、怪し気な笑みを浮かべる男の姿があった。 「ありがとうございました。またよろしくお願いします」 翔は出口で帰る客を見送っていた。そして客が出て行き扉が閉まりきる直前、再びドアが開くと、その男が入って来た。 「いらっしゃいま…あっ」 空いた客席を片付けていた太田は振り返りながら挨拶をしようとしたが、言葉が止まった。そこには白いスーツに白いエナメルの靴を履き、茶色味がかったサングラスをかけた〝いかにも〟といった格好の男が立っていたからだ。何よりも、その男のサングラス越しの眼光と漂う雰囲気は、明らかに一般人のソレとは異なるものがあり、その男が〝そっち筋〟の人間であることは明らかだった。