STORYSHO Kizaki

#202-2 洗礼しかし、翔は特に気にする様子

2021.12.20

#202-2 洗礼しかし、翔は特に気にする様子もなく、男にも他の客に接する時と同じように声を掛けた。 「おう、兄ちゃん。ここは今日開店なんか?」 男の問い掛けに翔は、やはり動じる様子もなく答えた。 「はい。今日からオープンです」 男はその言葉を聞くと、ニヤリと笑みを浮かべた。 「そうか…じゃあ、ちょっと責任者を出してもらおうか」 「僕が責任者ですが…」 「ほう、随分と若ぇじゃねぇか…まぁいい。じゃあ、ちょっと兄ちゃん話そうや」 そう言うと男は肩を組むように翔の肩に腕をまわしてきた。 (オーナー…) 太田は気が気ではない様子でその光景を見ていた。 「でしたら少しお待ち下さい」 しかし、当の翔はその腕をどかすと、太田の方に歩いて来た。 「あのお客さんが話があるって言うから、ちょっと出てくるよ。すぐ戻るけど、それまでの間、ホールが1人になっちゃうけど頼むね」 「ちょっとコーヒーでも飲んでくる」というような感じで、何事もなくそう言う翔に、太田は不安を感じた。 (オーナーは、相手が誰だか分かってないのか?) そんな太田を見て、翔は安心させるように笑って言った。 「大丈夫。死にはしないよ」