STORYSHO Kizaki
#202-4 洗礼兄ちゃん。あんまりヤクザ者を
2021.12.20
#202-4 洗礼兄ちゃん。あんまりヤクザ者をナメるなや。この世界にはな、ルールってモンがあんだ。兄ちゃんがあそこで商売をするなら、まずはウチの組に挨拶するってのが筋だろ。そこで許しを得たうえで、納めるモンをキチッと納めてもらわねぇと他への示しもつかねぇんだよ!」 「つまり〝みかじめ〟…場所代を払えってことですね」 「単刀直入に言えば、そういうことだ」 「すいません…シャルマンの頃は、そういうのがなかったので知りませんでした」 「シャルマン? 今の店の場所に前あった店だよな。兄ちゃん、あそこの店にいたんか?」 「はい。店長をやっていました」 「そうかい、なら話は早え。これまで通りの付き合いってことでええな?」 同意を求めるセリフだったが、男は残りのコーヒーを一気に飲み干すと、翔の返事も待たずに一方的に席を後にした。 (「ええな?」って…どうしたらいいんだ。振り込みなのかな?そもそも俺、返事してないんだけど…) コーヒー2杯分の伝票と一緒に席に取り残された翔は思った。 翔が店に戻った後は、1部のキャバクラ、2部のホストとも営業終了までの間、客は途切れることなく、また特に大きな問題が起ることもなく平穏に過ぎていった。 こうして、後に首都圏に十数店舗を構えるまでに成長を遂げるKIZAKIグループの記念すべき一号店『ジュエル』の初日は大盛況で終えた―。