STORYSHO Kizaki
#301-7 紹介翔は、この事を松本老人
2022.2.13
#301-7 紹介翔は、この事を松本老人に相談してみようと思った。あの言葉が本当かどうか確かめる意味でも。 ジッと考え込む翔の姿を見て、アテがあると気付いたのか、それまで口を挟まなかった薫が翔の背中を押すように言った。 「翔さん、田中さんは信用できる人よ。できるなら力になってあげて。お願い!」 そう言うと、薫は拝むように手を合わせた。 (ここで断ったら、いつも頑張ってくれている薫の顔を潰すことになるよな…。車の売り先も決まっているんだし、松本さんにもすぐに借りた金を返せるから迷惑にはならないだろう) 考えが固まると、翔は田中の目を見て答えた。 「分かりました。用意するのに少し時間がかかるかもしれませんけど、それで良ければ…」 すると田中は、満面の笑みで翔の手を両手で握りながら言った。 「ありがとう。やっぱり薫さんから聞いていた通り、懐の深い人だ。キミとならこれからも一緒に良いビジネスができそうだ」 その数日後、松本老人に相談したところ、2つ返事で300万円もの大金を貸してくれた。 これで、薫の顔を立ててあげることができる。そう思い、翔は安心し胸を撫で下ろした。 しかしこの時、翔はまだ気付いていなかった。これが再び始まる試練の入り口となることを。