STORYSHO Kizaki

#303-2 不安―それから、ひと月が過ぎ

2022.2.27

#303-2 不安―それから、ひと月が過ぎた。 田中からは何の連絡もなく、山積みされた商品を引き取りに来る気配は一向になかった。 (どうなっているんだろう…もしかして騙されたのか…) 不安に思った翔は、田中の携帯電話を鳴らした。 (もしつながらなかったら、解約してたら、騙されてたことになる) ―プルルルル…。 相手の電話の呼び出し音が鳴った。しかしそれで安心できるはずなどなかった。 (番号に気付いて出ないかもしれない…) ―プルルルル…プルルルル…プルルルル… 1回、1回のコールがとても長く感じられた。 (田中さんは前の車の時だって、ちゃんと約束を守ってくれた。今回だって、きっと…) 自分を励ますが相手が電話に出ることはなく、無情にコールだけが鳴っていた。 (頼む、お願いだ。出てくれ…) 心の中で叫んだその時、 『もしもし、輝咲さん? すいません、なかなか出られなくて』 いつもと変わらない調子の田中の声が聞こえて来た。 (出てくれて、良かった…) 驚きと安堵から、翔の言葉はちゃんとした形をなしていなかった。