STORYSHO Kizaki

#308-7 攻略「谷さんの知り合いで、

2022.5.3

#308-7 攻略「谷さんの知り合いで、東金の不動産に詳しい方はいませんか」 「不動産? なんや、店でも開くんかいな」 冗談混じりに言った谷の言葉に、翔は真面目な顔で返事をした。 「できれば10月には開きたいと思います」 「えっ!」 予想だにしなかった返事に、谷のみならず岩崎までが驚きの声を上げた。 「輝咲君、でも今日初めて東金に来たんだろ? それで、もう店を出そうって思ったのか」 「はい。この街も竹の塚と同じですから」 「竹ノ塚と同じ…」 首をかしげる岩崎に翔は自分なりに感じたことを説明した。 「この街も適度に飲み屋があって、適度にキャバクラがある。激戦ではないけれど過疎でもないってことです」 そして周囲のキャストには聞こえないように声を潜め、岩崎と谷にヒソヒソ話をするように言葉を付け加えた。 「それに、このくらいのサービスで、こんなに流行っているんなら勝負できますよ」 不思議とその顔には自信が満ちていた。 (なるほど…確かにこの兄ちゃん、面白いかもしれんなぁ) 目を細め煙草の煙を吐く谷には、それまでの人懐っこい雰囲気はなく、代わりに張りつめた異様な威圧感が放たれていた。しかし翔は、そのことに気付いていなかった…。