STORYSHO Kizaki

#312-1 運命時を前後して、

2022.7.03

#312-1 運命時を前後して、オーシャンをオープンさせ千葉進出を果たしたある日、翔は東金のファミリーレストランで岩崎と雑談混じりに昼食を取っていた。すると突然、後方のボックス席から怒号が聞こえてきた。 「おうワレェ…借りた金も返さんで、こんな所でなにさらしとんのじゃ」 振り返って見ると、年の頃40歳位、パンチパーマに鼻の下には髭をたくわえ、サングラスをした強面の男が、ボックス席に座るチンピラ風の男の眼前に仁王立っていた。そして、凄まじい剣幕で胸倉を掴み上げ、蹴りをチンピラのボディに突き上げた。 「ヒッ、ヒィィィッ!」 チンピラ風の男は、蒼白な顔色で悲鳴をあげながら、掴まれた手を必死に振り払い、強面の男とは反対側の通路に逃げ出した。 「待てやコルァァァァッ」 男はソファーを駆け上りチンピラを追いかけた。そしてチンピラのワイシャツの袖を掴むが、必死のチンピラもそれを勢い良く振り払う。 ―ビリッ あまりの勢いにチンピラのワイシャツは腕の部分から破れた。それでもチンピラはなりふり構わず逃げた。 店内は騒然となったが、その場に居合せた客達は逃げることもできず、事の終わりを待つしかなかった。すると…。 ―ファンファンファン… 店員が通報したパトカーのサイレンが近づいて来ていた。すると、男は我に返った様子で辺りを見渡した。 「!」 翔と目が合い駆け寄って来ると、ジャケットのラペルについていた金色のバッジを無造作に外し、無理やり翔の手に持たせた。 「兄ちゃん、コレ持っててくれ」 「えっ…あの…」 翔の問い掛けなど聞く耳も持たない様子で、男は裏口から逃げるため、一目散にキッチンの方へと走って行った。